小さな瞳
最終更新日 : 05/18
放課後、渡り廊下にお姉さまの姿を見付けた。
歩く向きからして、下足場へ向かっているのだろう。ちょっと大きな鞄の中身は恐らく体操服。
両腕で抱えたダンボール、閉じられていない上面から覗くスコップの柄などから、行き先はきっとこの下にある中庭の花壇。
渡り廊下からお姉さまの姿が見えなくなってから、教室の一番窓際にある席に腰を降ろして、ずっと中庭を見つめていた。
どれくらい経っただろう、体操服姿のお姉さまが中庭に現れた。
環境整備委員会という大層な名前の委員会は、あまり人がいないらしい。
でも、やっぱりここの花壇だったんだ。
嬉しくて、今すぐ駆け寄りたくなったけど、仕事の邪魔にしかなりそうもなかったから……うん、このままでいようと思った。
お姉さまがいない。
いつの間にか居眠りしていたらしい。一度お姉さまがこちらを見上げて微笑んだような気がするけど、どうも定かじゃない。
花壇は奇麗に片付けられている。ということは、今日の環境整備委員のお仕事は終わったわけだ。
もう陽の光も西に大きく傾いて、周りをオレンジ色に染めていた。
私は小さくため息をひとつついて、席を立った。教室の出口を向いた、その時。
扉に人の影が見えた。西日のため顔は見えないけど、私には判る。
「乃梨子。一緒に帰りましょうか?」
予想と違わない声の主は、恐らくずっと待っていたはずだ。
それを思うと嬉しくて、恥ずかしくて、それを隠すためについ大きな声で返事するのだった。
「はい、お姉さま」
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